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2013年1月20日 (日)

遺されるもの~3.偶然~ (銀河英雄伝説 二次創作)

遺されるもの

3.偶然

アントン・フェルナー准将が、休日、食事の買い出しのために立ち寄ったショッピングセンターで、オーベルシュタイン家の執事と出会ったのは、偶然以外の何物でもなかった。執事とは、かつて一度、オーベルシュタイン邸で顔を合わせている。フェルナーが気づいていれば、早々に退散したのだが、声をかけたのはラーベナルトの方だった。
「お元気そうで何よりでございます」
ラーベナルトは主人に対するのと同じように、深々と頭を下げた。
「私にそのような礼はご不要ですよ、執事どの。それより、何か小官にご用がおありとお見受けしますが」
単刀直入なフェルナーの言もあり、ラーベナルトの提案で、二人はモール内にある喫茶店に腰を落ち着けた。
「実は……下らないと笑って頂いて結構なのでございますが、主人の、最近の仕事ぶりをお伺いいたしたく思いまして」
ラーベナルトは卒のない笑顔を主人の部下へ向けた。フェルナーは目を細めて笑顔をつくりながら、この老人のポーカーフェイスに嘆息した。なるほど、主の訓令が良く行き届いていると言うべきか。
「仕事ぶり、ですか。このところ、特に精励されておいでですな。むろん、激務なのは元々ですが、この一週間、深夜のご帰宅も多い……執事どのにはご承知のことかと思いますが」
執事は頷いて、敬愛する主人の姿を思い浮かべるように、フェルナーの顔から焦点を外した。
「ええ、もちろんでございます。いつでも真面目で一生懸命なお方ですから。何か、仕事上で変わったことなどはございませんか」
再びフェルナーへと視点を戻して、ラーベナルトはコーヒーをすすった。その仕草がいかにもさりげなく、周囲にはおそらく、「年寄りが茶飲み話に若者を捕まえている」と映るに違いないと思えた。
「さて、小官には思い当たりませんな。『仕事上』においては」
フェルナーはこの老獪な紳士に、探りを入れてみることにした。フェルナーの予想するにこの老人は、この間、上官へ向けた質問の答えを持っているのだ。オーベルシュタインの「不幸な恋」。いや、それ以上の何かを。老人は相変わらず、ほとんど表情を変えずにコーヒーカップを置いた。
「仕事以外のことで、何かご存知、というわけでございますね」

つづく

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