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2013年1月20日 (日)

遺されるもの~4.フェルナーと執事~ (銀河英雄伝説 二次創作)

遺されるもの

4.フェルナーと執事

「親族以外で主人が館に招いた方は、フェルナー様お一人なのでございます。それはとりもなおさず、あなた様に信頼を置いているということでありましょう。だからこそ、お話し申し上げることです」

ラーベナルトの言葉が耳に残っている。フェルナーは初めて、触れてはならぬものに触れてしまった感覚を持て余した。オーベルシュタインの部下となって、徹底した秘密主義を貫く上司の、その思考の一端を、時折探り当てては楽しむ彼である。その途上には毒も棘もちりばめられており、それを巧みに避けながら歩いてきた。いまさらになってその棘に痛みを覚えるとは、予想もしていなかったことである。

「旦那様が幼年学校を卒業され、准尉に任官されたばかりのことでございます。ご僚友が不当に上官からの叱責と処分を受けたおり、旦那様はその上官と同階級の士官に、その不当さを訴えられました。その方は任官間もない旦那様のお話もきちんとご理解下さり、すぐにその話は責任者へと伝わり、その不当な処分を下した上官は、逆に処分を受ける立場となりました。ご僚友の処分も解かれ、晴れて任務に精励される旦那様を、地獄の底に突き落とした者がございました」

ここまで聞いた時、フェルナーは話の先の予想ができた。

「処分を受けた上官の友達という方が、門閥貴族に連なる者でした。爵位も持たぬ下級貴族ふぜいに、友人が侮辱を受けたと、その貴族の怒りを買ってしまったのです」

これは実によくあることで、血気盛んな門閥貴族の若君などの逆鱗に触れ、人知れず処刑されることも多いと聞く。

「たちの悪いことは、この後でございます。その門閥貴族は、旦那様のあらゆることを調べ上げ、旦那様の従姉弟でもあり、旦那様がただ一人、愛しておられた少女に目を留めたのでございます」

そのあとの話は、さしものラーベナルトも苦しげに語った。

連れ去られた少女。取り戻そうと戦い、虐殺された両親。

両親の殺される姿を、ただじっと見ているしかなかった少女。

辱めを受け、捨てられた少女。

その一連の凶行を、映像ファイルで見せられた少年士官。

少女の名は、そう、アリーセ、と執事が言っていたような気がする。

「旦那様とアリーセ様は、それはそれはお似合いの恋人同士でした。向日葵の花のように笑うアリーセ様が、あの事件を機に、笑顔も、声も失ってしまわれ、その凶行の一部始終をご覧になった旦那様は、一夜にしてお髪が白く……」

表面化しないだけで、珍しいことではなかったのだろう。フェルナーには分かっていた。しかし、幼年学校を卒業したばかりの15歳の少年に、受け入れることができようはずもない。

「旦那様はご自身をお責めになりました。最愛の女性を、生きながら殺したに等しい、と」

笑わない、泣かない、その声すら発することのない少女は、やがて成人し、美しい女性へと成長したが、彼女の時間は止まったまま、彼と共に生きることはなかったという。

「それが先日、珍しいことにアリーセ様の姉君様から、メッセージカードが届いたのでございます。それをご覧になった旦那様は、遺言状をお書きになりました……」

つづく

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