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2013年3月24日 (日)

「酸いも甘いも……」9.新領土総督 (銀河英雄伝説 二次小説)

9.新領土総督

 故リヒテンラーデ公爵の一族を私邸に匿った罪として、ロイエンタールは統帥本部総長の職を解かれた。続いての内示で、新領土総督として皇帝の代理で旧同盟領の政治と軍事を掌管せよとの命令が下った。地位は各省の尚書と同格、つまりは栄転である。
「これで卿と俺とは同格ということか」
近況報告を兼ねて、ロイエンタールからフェザーンへFTLを入れた。
「おめでとう、ロイエンタール」
「ああ……しかしな」
表情を歪めるロイエンタールを見やる。オーベルシュタインにも、言いたいことは分かっていた。
「帰ってこないということだな。もう、ずっと」
ロイエンタールが新領土総督として何か失政でもおかさない限り、おそらくその地位は動きようがないだろう。そして彼が失政をすることなどありはしないだろう。いずれは帝国本土と同様、内務省統括下の組織が内政を担当するにしても、駐留する軍隊は必要であり、総督から新領土軍総司令官にでもなるかもしれない。いずれにせよ、フェザーンへの帰還は望めそうもなかった。
「そういうことだ。年に一度、いや、2,3年に一度くらいは帰れるかもしれんが、何しろ遠いからな」
「そうだな」
時折スクリーンに発生する砂嵐が、二人の距離を表現していた。
「なあ、オーベルシュタイン。……別れようか」
その言葉はロイエンタールの口から、低く、静かに発せられた。
「な……んだと?」
「考えてもみろ。2,3年に一度しか会えない恋人など、恋人と言えるか。卿も寂しさばかりが募るだろう。それよりも俺なんかと別れて、新しい恋でもした方が、卿にとってまだ救いになるのではないか」
オーベルシュタインは激しくかぶりを振った。
「いやだ。いやだぞ、ロイエンタール。卿はそれで良くても、私はいやだ。私には卿しか、ロイエンタールしかいないんだ……」
幼子のように駄々をこねるオーベルシュタインを見て、ロイエンタールは思った。そうだ。この男が器用に恋愛できるなら、10年も自分のことを想い続けてなどいなかっただろう。そういう男だった。
愛人なり恋人なりに束縛されるのは好きでなかったロイエンタールだったが、オーベルシュタインに執着されることを、なぜか好もしく思った。
「分かった、オーベルシュタイン。今の発言は忘れてくれ」
こくりと頷くオーベルシュタインは、相変わらず鉄面皮の様相のままだったが、何ともいえず可愛らしく見えた。
「さしあたって俺が総督になるのも、ヤン・ウェンリー討伐後のことだ。来月にはイゼルローンへ向けて発進するから、当面、その戦いで俺が戦死せぬことを、祈っていてくれるか」
「ああ、祈っている。それと、手紙を送る」
手紙か……彼の意図は分かった。軍用のFTLを頻繁に私用で使うわけにはいかない、そういったところだろう。
「俺も送る。俺は結構まめだから、覚悟しておけよ」
「期待している」
オーベルシュタインが微笑むのを見て、ロイエンタールもわずかに微笑んだ。


 イゼルローンへの進発と前後して、フェザーンでは重大な事件が発生していた。4月12日、帝国本土からイゼルローンへの遠征に向けて艦隊を移動して来たアウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将と、イゼルローン要塞失陥時の要塞司令官だったコルネリアス・ルッツ上級大将が共にフェザーンの地に到着したことを受け、フェザーン代理総督官邸にて歓送迎会が催されていた。その会場で、爆弾テロが発生したのである。軍務尚書でありフェザーンの防衛司令官でもあるオーベルシュタインも出席していた。
このテロで被害を被った者は多数いたが、中でも高官でいえば、工部尚書のシルヴァーベルヒが死亡したことは大きいだろう。オーベルシュタインも負傷し、治療と検査のための入院を余儀なくされた。この凶報がすでにイゼルローンへ向けて航行中の総旗艦ブリュンヒルトにもたらされたのは、4月19日のことであった。ロイエンタールはオーベルシュタインの負傷を聞いて一瞬どきりとしたが、軽傷であるとの追加情報が入り、この戦いが終わったら、公用だ私用だと言いたてず、FTLで様子を確認しようと密かに考えていた。
 4月29日、皇帝ラインハルトの到着を前に、先陣の艦隊とヤン艦隊との間で最初の砲火が交わされ、5月1日、ラインハルト率いる帝国軍本隊も回廊への侵入を開始した。

(つづく)

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