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2013年3月24日 (日)

「酸いも甘いも……」1.甘いコーヒー (銀河英雄伝説 二次小説)

銀英伝二次小説です。今回は、オーベルシュタインの一途な恋がテーマ。
巷での表現方法に倣うと、「不遜な部下→義眼×金銀妖瞳」です(爆死)。
主にオーベルシュタインとロイエンタールのお話。
腐向けですが、全年齢版です。

どんなことでも「こう」と信じたらブレないオーベルシュタインの、
一途さ、ひたむきさをお楽しみ下さい。不器用な恋すぎて、
「お前誰だ」というくらい、乙女ちっくな閣下に仕上がりましたorz

いつもどおり、pixiv同時掲載です。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=2152236

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酸いも甘いも……

ようやく……ようやく卿のもとへ行ける
卿のいない帝国(ここ)は無味乾燥で、すべてがなかったことのようだった
愛した記憶さえ空虚で、私は時の経つのを恐れた
だが、それも終わった
私も行くよ
……天上(ヴァルハラ)の恋は、どんな味がするのだろう

1.甘いコーヒー

 それはバーミリオン星域会戦の終結、ラインハルト・フォン・ローエングラム公とヤン・ウェンリーとの会談、そして新銀河帝国ローエングラム王朝の誕生と、慌ただしい日々の続いた時期であった。ラインハルトの即位に伴い帝国元帥に叙せられ、軍務尚書として軍人でありながら閣僚の地位を与えられたパウル・フォン・オーベルシュタインは、まだ馴染みのない軍務省ビルの執務室で、軍人事の再編成や軍務省機能そのものの見直しなどに追われていた。
「閣下」
決済を求める書類を手に入室してきたのは、彼の参謀時代からの部下であるアントン・フェルナー准将であった。オーベルシュタインは顔を上げずに「置いていけ」と未処理書類のケースを示し、黙々と手元の文書に目を通していた。フェルナーは上官の指示通り書類を置くと、線の細い体をしているくせに妙に元帥服が似合うオーベルシュタインの姿をしばらく見つめた。若白髪の多い黒っぽい髪、青白い顔にこけた頬。冷たい光を放つ名だたる義眼に、色の薄い唇……までは見えなかったが、今日も変わらず陰気な顔をしている。
「閣下、昼を過ぎていますよ。昼食を運ばせて、一息入れられてはいかがですか」
他の部下たちが仕事に没頭する上官へ声をかけられずにいることを知っているため、フェルナーは慇懃無礼な態度でそう言った。しかし上官は顔を上げない。
「不要だ」
そう言い捨てて、書類の末尾に流麗な、しかし几帳面さを伺わせる筆跡でサインをした。
「閣下、忙しいのは承知の上です。ですが栄養補給をすることで脳は活性化されますし、適度な休憩は仕事の効率を上げます。そんなこと、私に言われなくてもお分かりでしょう」
執務机越しにフェルナーがぐいと身を乗り出したため、書類の上に影ができて、オーベルシュタインは咎めるように顔を上げた。その視線はフェルナーを射抜くに十分だったが、右手がペンを置いていることに優秀な部下は気付いていた。
「まったく素直じゃないんだから。すぐ従卒に持って来させますから、閣下は休憩室で待っていて下さいね。コーヒーと紅茶、どちらになさいます?」
癖の強い銀髪を持つ身軽な青年は、早くもドアノブに手をかけながら、書類を整える上官を見やった。
「コーヒーでいい」
能面のような顔を崩さずに、しかし少しだけ仕事から離れた柔らかみのある声で、オーベルシュタインはそう告げた。
「承知しました」
フェルナーは、してやったりという笑顔をつくってから、ドアの外に待機する従卒へと指示を出した。

「卿もここで食べる気か」
従卒が二人分の食事を運び込むのを目にして、オーベルシュタインは相変わらず無感動な表情でフェルナーの顔を見た。軍務尚書執務室の隣室に当たる尚書専用の休憩室兼面会室のその小部屋に、ちゃっかり部下が居座っている。
「はい。仕事好きの上官のお陰で、小官も昼食を取り損ねまして。士官食堂はもう閉まっていますし、皆が仕事をする脇で事務机に昼食を広げるのも気が引けます」
ご迷惑ですかとは、あえて問わないフェルナーである。多分、いや十中八九この上官は、煩わしく思っているだろう。だがこうでもしなければこの上官は、書類を広げながら適当にスープをすすって食事を終了しかねない。明らかにそれほど頑健そうでもないくせに、自分の健康に頓着しないものだから、部下たるものが配慮するしかないのである。
「どうぞ、コーヒーです」
コーヒーはフェルナーが淹れている。これは特別上官を思いやってというわけではなく、フェルナー自身がかなりのコーヒー党で、豆や淹れ方にこだわりがあるため、他人任せにできないという理由であった。ミルクと角砂糖を2個つけて、上官の前に置く。実はこれが良く分からない。オーベルシュタインはブラックで嗜むことも多いが、時折フェルナーが目を剥くほど砂糖を投入して甘いコーヒーをすすることがある。どんな心境で飲み分けているのか定かではないが、知る必要もないだろう。今日のオーベルシュタインは、躊躇いもなく砂糖を2個入れた。連日の過密スケジュールに疲労し、無意識に糖分を欲しているのだろう。
さて、上官の疲労と緊張をほぐすため、他愛もない世間話でもしようか。
「閣下、実は小官、先日彼女に振られまして」
良く言ってはずれのない、悪く言えば個性のない士官用の昼食をせっせと口に運びながら、フェルナーは自嘲するような笑みを浮かべた。
「そうか」
上官が素っ気なく相槌を打つ。無論、上官がこの手の話に興味のないことくらい、フェルナーも知っている。というより、プライベートな話一切に興味を持たないのだから、相槌を打ってくれただけマシと言えよう。
「私なりに大事にしていたつもりなのですが、仕事と私とどっちが大事なのって、平凡な台詞で責められまして、結局別れることになりました」
フェルナーも食事の手を止めなかったが、オーベルシュタインも手を止めず、心底面倒くさそうにぎろりと部下を睨んだ。
「確かに、平凡でありがちなことだな」
それでも応答してくれたのはなぜなのか、フェルナーに推し測ることはできない。しかしともかく無視はされなかったのだからと、フェルナーは気を良くして続けた。
「そんなわけで、目下、新しい恋人募集中です。閣下のお知り合いに、いい人いらっしゃいませんか」
オーベルシュタインは数秒沈黙したが、半ば呆れたような顔で答えた。
「私に心当たりがあるとでも?」
もう夏になろうというのに凍えるような風が吹いた。無論、比喩的な意味でである。しかし最初から、その程度のことは織り込み済みであるところが、フェルナーの狡猾なところである。
「そうおっしゃいますが、閣下はどうなんですか?浮いた話は聞きませんが、気になる人くらいいるでしょ?」
本気でオーベルシュタインの恋のお相手を聞き出そうなどと、フェルナーは思っていない。ただ少しでも普段とは違う思考、想いの巡らせ方を上官にしてもらい、いつもと変わった休憩時間を過ごしてもらいたかっただけである。無論、聞き出せるものなら聞き出してみたいと思うのが、人間の性(さが)ではあるが。
「どうなんです?」
と、半ば形式的に質問を投げかけて、フェルナーは思わず動きを止めた。オーベルシュタインがフォークを持ったまま、目を閉じてしまっていたのである。まさか具合でも悪く……と一瞬戦慄したが、その表情は何やら考え込んでいる様子だった。やがて目を開け、その人工眼球を晒すと、オーベルシュタインは何事もなかったかのようにいつもと変わらぬ声で、
「興味がない」
と答えて、甘みの強いコーヒーをすすった。

(つづく)

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