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2013年10月30日 (水)

部下 - 2013ハロウィン (銀河英雄伝説 二次小説)

とても短いSSですが、ついのべにするにはウザい程度に長くなってしまったので、こちらに投下させて頂きます。
今回は軍務省ハロウィンです。

Line4


部下 - 2013ハロウィン


新設の士官学校を視察中、軍務尚書がはたと足を止めた。
「どうなさいました?」
随行していたヴェストファル中佐に問われ、オーベルシュタインは「いや……」と小さく首を振り視線を戻した。
軍務省へ戻る地上車の中から、しきりに窓外を眺めながら眉間に皺を寄せていたが、執務室に辿り着いた瞬間にその情のこもらぬ義眼で己のデスクを見やると、他へは聞こえぬ溜息を漏らした。時計は5時を回り、帰り支度をする省員も多いが、彼直属の優秀にして厄介な部下は未だコンピュータ端末に向かっていた。
「どうされましたか」
護衛隊長の怪訝そうな声で我に返ったオーベルシュタインは、彼を下がらせると何食わぬ顔で職務を遂行している部下を一瞥し、自らも席に着いた。
「……どうなさいました、閣下?」
しばし手を止めていると、フェルナー准将が薄い笑みを浮かべて問いかけてくる。オーベルシュタインはうんざりした顔で、悪戯好きの部下と自分のデスクに飾られた物体を交互に見やった。
「今日は至る所で目にしたが、このカボチャは何だ」
明らかに食用とは思えない形状の黄色いカボチャの、中をくり抜いて目や口の彫られた人形が、オーベルシュタインのデスクの実に4分の1を占領している。
「ご覧の通り、少し変わったカボチャですよ。この殺風景な部屋に彩りを添える装飾品とお考え頂ければ結構です」
卒のない笑みで答えるフェルナーをぎろりと睨んで、部屋の主が小さく、しかし紛れもなく絶対零度の反論をした。
「……飾るスペースに対して飾る物の体積が釣り合っているとは思えぬ。第一、手の込んだ装飾であることは認めるが、可愛らしさの欠片も感じられぬデザインだ。卿の美的センスを疑わざるを得んな」
右手でコツンと空洞になったカボチャを叩くと、この話はこれで終わりだと言わんばかりにペンを取り、手元の書類に目を落とした。
「いくらなんでもあまりの言いようだと思いますが、今日はこの一言で許しましょう。閣下、Trick or Treat !」
翡翠の目を楽しげに輝かせて両手を差し出すフェルナーに、凍てつくような眼光を向ける。10秒余りもそのまま動かず、やがて根負けしたのは上官の方であったようだ。オーベルシュタインはデスクの一番上の抽斗を開けると、高級メーカーのデザイン缶からチョコレートを取り出し、フェルナーの手に乗せてやった。
「ありがとうございます、閣下」
銀の包み紙の小さなチョコレートを弄びながら微笑むフェルナーに、オーベルシュタインは呆れたような視線を送ってから、
「悪戯も済んだ上での要求とは、私も図々しい部下を持ったものだ」
と呟いた。
「尤も……卿の図々しさは今に始まったことではない、か」
リップシュタット戦役直前、転向を申し出たフェルナーの大胆不敵な物言いを思い出して、冷徹なる軍務尚書は微かに口角を上げた。


(Ende)

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