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2013年11月18日 (月)

主人と犬 (銀河英雄伝説 二次小説SS)

深夜に思いついてスマホ入力したのに、保存しようとした瞬間に全て消え去ったものを復元したお話ですorz
オーベルシュタインと犬は、どんな風に過ごしたのかな、という妄想。

Line4


主人と犬


「これで、良かったのだろうか」
書斎の小さなソファに身を沈めて、オーベルシュタインは小さく独りごちた。
ヴェスターラントを犠牲にするのは、やむを得ない仕儀である。主君から最大の腹心を遠ざけるのも、未だ組織として脆弱な帝国にとっては必要な処置である。――マキャヴェリズムの観点から見れば。
未熟さと危うさと、そして気高さを持つ主君に代わって、大きな闇を全て、己の肩に乗せて行くのだと、とうに決めていたのだ。
赤ワインを静かにグラスへ注ぐ。ボトルを持つ右手が小刻みに震える。

この震えは、迷いなのか。
迷いは、弱さだ。

ふっと、生暖かいものが膝に触れた。この春に奇妙な縁で我が家の一員となった老犬が、主人の左膝にその痩せた顎を乗せていた。
「どうした」
訝しげに老犬の顔を覗くと、老犬は左右にゆっくりと尾を振った。そっと顎を撫でてやると、みるみるうちにその目は細くなっていった。ふと、その衝動に駆られて、オーベルシュタインは目の前の犬を抱き上げた。もっと抵抗を受けると予想していたが、老犬は思いのほか無抵抗に主人の腕の中に収まった。
「私は、間違っておらぬだろうか」
老犬は答えない。ただ、胸に感じる温もりだけが、互いの存在を認めているように思えた。

温かい。
ただ、それだけなのだ。
私が欲し、得られるものは。

「もしも私が道を誤った時には、お前が私を諫めてくれるな」
クンと鼻を鳴らして、ただ一度主人の手を舐めると、老犬は我関せずといった顔で船を漕ぎ始めた。オーベルシュタインはぎゅっと老犬をかき抱いて、その胸に温もりを刻んだ。

ただ、温かい。
その感触だけが、彼の拠り所であった。

「拾われたのは、どちらであったのだろうな」
オーベルシュタインは小さく笑って、老犬のあどけない寝顔に優しく唇を落とした。主人の腕(かいな)に包まれて、老犬は心地良さげに寝息を立て始める。

老犬もまた、その温もりだけを求め、満足しているのかもしれない。
主人と老犬は、その温度を時折確認するために、共に時を過ごしているのかもしれない。

オーベルシュタインは老犬の体に柔らかなガウンを掛けてやると、しばし瞼を閉じてまどろんだ。


(Ende)

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コメント

ゆいさん、こんばんは。

ヴェスターラント…は、重いテーマですよね。

オーベルシュタインは、死の間際に犬の心配するぐらいだから、たぶん優しい人だったのだと思います。
だから、自分が提言したヴェスターラントに関しては、たぶんラインハルト以上に重く受け止めていたんじゃないかなと思います。

犬をもふもふして、少しは心の重荷を軽くしてくれるといいですね。

リラさん、こんばんは。

重いですね。それほど重く書かなかったですが、閣下のことを書くには避けて通れないテーマです。

オーベルシュタインは非情な献策をたくさんしていますが、その死に際しての言動からも、人間らしい心を持ち合わせた人のようです。

……というか、当たり前ですよね。仕事では目的のために冷徹になれる。プロに徹することができるということであって、冷たい人間であるわけではないのですから。
物言わぬ犬が、そっと癒していてくれたらいいですね。

コメントありがとうございました。

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